中国人MBA生は優秀ってホントかな?

中国人の学生って優秀だと思いませんか?日本の大学院で学ぶ院生も中国人がかなりいますよね。

彼らは日本語もかなり上手いし、色々本もしっかり読んでるっていう印象です。

でも、意外と一緒に勉強する機会ってないですよね?

今回、私は華東師範大学で案例大赛というケース研究の発表会に参加することになり、中国人MBA生とグループワークをしたんですが、その感じをレポートします。

結論:中国人MBA生が全員優秀だとは限らない!

結論を先にいうと、中国人MBA生にも優秀な人、そうではない人の両方がいるよ、という当たり前のところに落ち着きます

なので、今回一緒に数人と作業をした範囲で、その人達に関して言うと、というお話になります。

具体的には小論文を書くのにネットで検索して出てきた適当な文章をほとんどパクって作っちゃう、という安直さに疑問を持っていない人もいる、という感じ。

案例大赛ってどんな大会なのか?

今回参加するケース研究の大会ですが、任意の企業を研究テーマに選び、その企業の経営的な課題を説明し、どのような形で解決するべきか、というような内容で、4人以上5人までのチームの場合は10,000文字以上の小論文が必要です。

まず10,000文字の小論文を提出し、それを審査員が提出者が誰かわからない状態で審査をします。

後日、パワポでプレゼン資料を作り、10分間のプレゼンを行う、というものです。

参加チームは140組位ですが、このようなイベントに参加しないと取れない単位があるからなんです。私も今回単位取得のために参加することにしました。

参加申し込みからプレゼンまでは約2か月、この時間の中で辻褄を合わせなくてはいけません。

グループワークは難しい

昨年、日本の大学院でもケース研究をグループでやって最後にグループ単位でプレゼン、というのは何度か経験していますが、結構難しいんですよね。

まあ、なんといっても参加者同士の認識のズレだったり能力の差がありますので、意見がまとまらなかったりするというのが一番難しいところですね。

実際、日本でのグループワークでもやっているうちに仲が悪くなっちゃう人たちもいたようです。

このケース研究、高い評価を得られれば学内での表彰の対象になりますし、これから転職するという場合にも企業にアピールできますので、みんな結構真面目に取り組もう、という姿勢は見せます。

研究対象となる企業をどこにするかが重要

研究対象の選び方で小論文が書きやすくなるかどうかがあらかた決まると思います。

重要なのは信頼性の高いデータがちゃんと入手できるか、という点ですよね。 例えば上場していない会社を対象企業とした場合、BS、PLといった資料の入手が難しいことが考えられます。

しかし、上場企業の場合はアニュアルレポートなどが開示される情報が多くなりますし、メディアで取り上げられる機会がある企業はその分きちんとしたインタビューなり記事がソースも込みで入手できる可能性が高くなります。

また、皆が知っている企業を対象にした方が興味を引きやすい反面、あまりにも有名というかトレンド感のある企業の場合、他のチームと被ってしまうことも考えられますし、やりつくされた感があって興味をひかない、ということもありますよね。

いまの中国だとテンセント、アリババ、小米あたりは避けた方がよさそうです。

実際にやってみたけど・・・作業プロセス上の問題点

私のチームは5人チームで、テーマは某オンライン語学学校にしました。

この語学学校は中国の英語、留学ニーズの高まりを捉えて急成長した企業ですが、子供から大人までをカバーするオンライン、オフラインの語学教室をたくさん子会社として運営していて、色々とロスが多そう、というようなことが指摘されがちな企業です。

私たちのチームにはこの企業で働いていた、という人がいて、ここをテーマとしてとりあげたい、ということでした。

この多角化によって混乱をきたしている、という点を課題と捉え、その解決策を提示する、ということですよね。

ただ、問題点は子会社が無数にあることで混乱している、ということを事実としてどう証明するか、というところです。

印象としてそんな風には見えますし、実際に内部で働いていた人も内部では様々な混乱があった、といいます。しかし、それを客観的に裏付けることができなければ話が進んでいきません。

私としてはこの会社のアニュアルレポートは入手できるので、そこからBS、PLを参照、混乱しているということを裏付ける部分を探す、というのが正攻法だと思います。

例えば連結で見た時の販管費がとても多い、ということであれば子会社が多いことで間接部門が非常に多くなっている、ということが言えるかもしれないし、それによって赤字になっていれば赤字の理由を販管費に求め、販管費の理由を子会社が多すぎることに見出すことが出来るかもしれません。

そうすれば子会社が多すぎることが混乱=赤字として客観的に説明できます。

情報の信頼性について頓着しない

そこで過去数年分のアニュアルレポートをダウンロードし、皆で共有した上で小論文として必要になる内容を分担して作成することになったのですが(この分担作業、というのもちょっと気になるやり方ですが・・・)、皆の文章を見るとソースをとにかく明記しない

たとえば海外に留学する中国人は年々増えている、というグラフがあったとして、そのグラフがどんなデータを元にして誰によって作成されたのかがどこにも書いていない。

そこで、このグラフはどこから来た?と聞くと『公開情報』という返事が返ってくる。

じゃあ、誰が、どこに公開した情報なのかを聞くと『わからない』という回答・・・

要するに、ネットで検索して出てきた情報を、正しいかどうかを判断、確認せずにそのまま使って文章を書いている、ということなんですよね。

他のメンバーの文章も同様で、企業理念や今後の市場の伸びしろ、経営者のインタビューなどがあるのでこの辺はどこから来た?と聞くと『ネットの記事とか経営者のインタビュー、経営者自身の自著』という返事が返ってくる。

だから、ネットの記事とはどこの誰がいつ掲載した記事?信頼性は?インタビューも誰が誰にインタビューして、どうやってそれを入手した?経営者の自著のタイトルは?出版社は?発行日は?参照している箇所は何ページ目から何ページ目にあるの?

というところをまったく気にしていない。ネットの記事だけで書いちゃうんですよね。ソースを確認せずに。

結局、問題はどこにあるのかはっきりさせないまま印象だけで文章が出来ていく

こんな感じなので、アニュアルレポートも誰も見ないし、BS、PLからの分析も行われません。

で、印象だけで『混乱してます!』ということを根拠にして解決策も『こうしたらいいです!』というごく個人的なアイディアが根拠が提示されないまま自信満々に語られる、ということになってしまいます。

出来上がった小論文もパワポのプレゼン資料も穴だらけ、突っ込みどころ満載なのですが、とりあえず私としては参加して単位が取れればいい、という感じなのでまあいいか・・・

知的所有権についての認識の甘さがパクリ論文を招く?

結論として中国人MBA生の全員が優秀とは限らない、と書きましたが、ニュアンスがちょっと違うかもしれません。

正確には知的所有権の認識が社会全体として甘すぎるため、論文や研究、といった作業を行う場合に先行研究をどう扱うか、人の書いた文章をどのようにすればいいのか、という点が全然理解されていない、ということですね。

この点については私のチームのメンバー4人はまったく理解していないし、ソースが確実なのかを提示しなくてはならないし、印象だけで話を進めてもただの作文にしかならない、意見にはエビデンスが必要、と何度も言ったけど聞き流されましたね。

これはMBA生だからなのかもしれませんね。もっとガチの研究者として学部から博士コースにいっている中国人学生や研究者はこの辺のルールを当然知っていて、それにそって研究をしていると信じたいです。

発表会は日曜日なので、これでどんな結果になるのか、ちょっと楽しみです。

これで高い評価になっちゃったりすると中国のMBA教育ってなんなの?ということになっちゃいますけどね・・・